色黒の豚

飛ばねえ豚はただの豚だ

緑の夜行列車

 

 ウランバートルに向かう夜行列車は、ペンキを塗り立てたばかりのような鮮やかな緑色をしていた。石炭を燃やして、モクモクと煙を出しながら駅に向かってくる。特別鉄道が好きということはなかったが、かっこ良い。さぁ乗りこむぞと思ってもしばらくドアは開かない。点検だろうか。20分ほど待って、ようやく乗り込んだ。

 

予約した寝台は、二段ベッドが二つ並んだ部屋の右上にある。北京から移動した夜行バスのベッドとは違い、足を伸ばせる広さがあり、感動した。ベッドに寝転がっていると、同じ部屋の残り3人が入ってくる。いきなりゴロゴロしてるのを見られるも気恥ずかしいな、と体を起こすと、モンゴル語で話しかけられる。分かりませんという顔をすると、英語で話しかけてくれる。ありがたい。3人はモンゴルの大学生だった。韓国に留学をしているらしい。故郷に帰るのは2年ぶりだと言って、はにかんだ。

 

部屋の窓は大きく、景色が良く見える。列車がゆっくり走り始めると、少しづつ景色が変わった。ザミンウードの街中を抜けると、建物はなくなっていく。初めに見えたのは、荒れ地だった。石だらけの大地。ぽつぽつと、ゲルが見える。こんな所にも人は暮らしている。いくつかの閑散とした途中駅を過ぎ、次第に窓の外は砂漠のようになった。石から砂に、平地から砂の山に変わっていった。夕日が砂の彼方に沈んでいって、美しいと思った。

 

同室の3人はお菓子や飲み物を快く分けてくれる。いい人たちだ。お返しにと、中国から持ってきたレーズン的なものを渡すが、あまり美味しくなかったので悪いことをしたかもしれない。3人は日が沈んでも、遅くまで勉強をしていた。えらい。わしは暗い窓の外に何か見えないかと目を凝らしていたが、そのうちに寝た。

 

朝起きると、モンゴルの草原の中にいた。牛がいて、馬がいて、ヤクがいた。開いた窓から草の匂いがする。こんなに気持ちがいい景色があるものかと興奮した。同室のモンゴルの大学生も、そうだろう、綺麗だろうとニヤニヤする。綺麗だ。この列車の景色だけで、モンゴルに来た甲斐があった。ここがモンゴルでの感慨のピークじゃないかとさえ。

 

トイレに行って用を足し、ボタンを押すと、何と便器の底が開く。そして、そのままモノが線路に落ちていく。一瞬ギョットなったが、笑いたくなってきた。この大草原の中で、大して気にはしないのだろう。きっと街の近くでなければ。

 

ウランバートルが近づいてくると、カラフルな建物が現れてくる。綺麗な色合いだ。ちょっと中国では見ないような。列車は徐々に速度を落とし、ついに止まった。目の前のウランバートル駅は、白と緑を基調にした、お洒落な建物だ。同室の大学生に握手をして、列車を降りた。

 

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                                                                                                                               つづく